ワークショップ「現象学」 -2009年5月以降、休眠中-
担当:Pema Pera
開催時間:毎週金曜日 午後2時(SLT/PDT)
言語:英語
メディア:テキスト・チャット
現象学は、分野によって異なった使われかたをします。哲学では、20世紀にエトムント・フッサールが創始した哲学を指し、科学分野では、新しい研究対象にとりかかる第一ステップ、対象を理論モデル化する前にその基本的な現象を図式化していくことを指しています。フッサールは哲学者でしたが、科学者と言ってもいい学者です。彼は、現象学的分析手法を体系化するにあたり、部分的とは言え、科学でよく使われる思考実験を拠りどころにしました。アインシュタインが特殊相対性理論を思考実験によって導き出したことはあまりにも有名ですね。アインシュタインは、マクスウェルの電磁気学理論を高速にあてはめたときの現象を体系的に想像・分析して特殊相対性理論を導いたのです。
フッサールはほかの主だった哲学者が没頭した理論的な分析や推測に満足できず、理論と実験が両立してはじめて成り立つ、科学の実証モデル的方法を追求しました。そして、現象を検証するひとつの方法として、体系的に判断を停止する「エポケ」を提唱するようになりました。デカルト的懐疑とは違い、フッサールのエポケはすべての判断を停止するよう求めます。信条・信仰、価値体系、疑念、これらの介入の一切をとり払い、現象を、現象そのものが語らんとするところで捉えていこうとする。フッサールは、科学的手法を拡大し、探求の対象となっているそもそもの現象をその豊さにおいて捉えることを可能にしました。また、実証科学の一般的な手法である客観的な検証法に加え、主体そのものを検証する方法や、主体-客体の関係を探る新しい方法を求めました。フッサールは、実証的な科学手法を批判的に検証し、「実証」が狭い意味での客観的な経験をさすだけでなく、人のありとあらゆる経験を包みこんだ考え方だということを明らかにしたと言えるでしょう。
このワークショップでは、上記のフッサール精神をもって、日常生活の現象を検証してみます。フッサールが書き残した膨大な書物にあたる必要はありません。力学を理解するために、ニュートンやケプラーが書いたすべての文献にあたる必要はないのですから。そのかわり、参加者には、みんなで使うことになる語彙を一緒に築いていくなどの、共同の取り組みを求めます。ディスカッションや調査結果はすべて、そのままウェブで公開します。これを見て、このワークショップの取り組みに関心をもってくれた人はぜひ、わたしたちを尋ねてみてください。参加を希望する人は、MLグループへの登録を申し込んでください。
現象学および、その他の哲学の予備知識は必要ありません。まずは、実際に検証し、それを批判的に考察してみます。グループごとにその週のテーマを決め、次のワークショップまでにそれぞれが与えられた課題に取り組みます。各グループごとに、1)結果を報告する、2)その結果を批判的に考察する、3) 次週の課題となる、新しい検証の方法を決める、という進め方をして行きます。
現象学ワークショップのWikiは: http://pheno.wik.is/
現象学ワークショップのMLは: http://groups.google.com/group/kira-phenomenology-workshop
これまでのワークショップの過去ログおよび、Pema Pera (天文物理学者)とGilles Kuhn(認識論学者)のディベートのトランスクリプト:Events Transcripts.