Kiraの学際的サイエンス・セミナー
担当:Vic Michalak
開催時間:毎週木曜日 午前10時(SLT/PDT)
言語:英語
メディア:テキスト・チャット
このセミナーでは、世界をより広く、より深く理解するために学際的な科学的コラボレーションがこれまで何をなしてきたか、これから先なにがどのように可能か、また、特定の分野において、一分野にとどまっていてはありえなかったどのような突破口を提供してきたか、今後するであろうか考えてみます。このセミナーは、2009年2月に『ニンフの科学セミナー』で行われたPiet Hut(SL:Pema Pera)の「知識の知」と題したプレゼンテーションに触発されて開設されました。
「近年の科学研究における重要な課題のほとんどが、その解明に学際的な協力を必要としています。認知科学しかり、システム生物学しかり、環境学しかり。たとえば、代替医療を厳密に評価していくにはどうするかといった複雑な問題に対処するには、専門家集団が集まっていくつもチームを作り、その中で意見交換し、共同で作業にあたる必要があります。ところが、現状では、各分野における文化や方法論の違いが、幅広い学際協力の成就をはばんでいます。学際協力を意味あるものにするにはどうすればいいか。それは、おそらく、自らの知識を深めるだけでなく、お互いの知識への理解を深めること、『知識の知』に重点を移すことにあるのではないでしょうか。」
セミナー第1回目は、まず、これまでの学際研究の発展をたどり、学際研究、多分野共同研究、分野横断型共同研究、領域横断的研究のそれぞれの意味するところを探ってみます。これまで実際に行われてきた学際的協力についてブレーンストームを行います。それから、スピーカーを決めて、学際的協力の事例や、学際的アプローチを必要としている研究課題についてのプレゼンテーションを行ってもらいます。
このセミナーは、以下の4部構成とします。(内容により、前の部に戻ったり、先に進んだりするかもしれません)
第1部:過去
ひとつの科学研究分野の観測、方法、考えかたが、他の分野の研究の役にたった事例があるか。そのコラボレーションはどのようにして起こったか。成功にどのように寄与したか。協力関係は、どのように受容されたか。事例:アルバレス家の父親と息子がそれぞれの地質学と天文学の知識を結びつけ、6,550万年前(中生代と新生代の境目、地質学ではK-T境界)に起こった、恐竜をふくむ生物の大量絶滅を起こした可能性のある原因が何かをつきとめた。
第2部:現在と今後
どのような学際的科学研究が現在、検討され、実行されているか。今日の課題はなにか。学際協力は、問題解決にどう貢献することができるか。たとえば、多種多様な専門分野の研究者が地球温暖化問題に携わっている。また、コンピュータサイエンス分野でも、「モアの法則」の存続のためには、複数の科学分野の協力が不可欠とされている。
第3部:将来
多様な研究分野がその考え方、問題へのアプローチ、方法論を出し合って問題の解決にあたり、よい成果を出していくにはどうすればいいか。学際協力の参考になるような、ほかの領域でうまく機能している協力関係はないか。課題の解決やスムースな協力関係を阻む、「超えがたい溝」は何か。その「超えがたい溝」を超えるために援用できる知的奇策はないか。
第4部:分野横断的学際アプローチ
これまでの検討から、新しいアプローチたりうると思われる方法を問題解決に応用してみる。第1-3において、なぜ学際的協力関係が必要か、そういった研究がもたらしてきた成果はなにかを吟味してきている。そこで、現在学際研究が直面する問題に共通項がないかを分野横断的に探ってみる。問題は、コミュニケーションのありかたか、そもそもコラボレーションそのものが間違いなのか、それとも、計算に誤謬があるのか。学際協力をはばむ障壁を簡潔に記述する方法はあるか。その記述により、可能なアプローチや方法論、問題の解明のしかた、あるいはコラボレーションにひそむ問題の所在そのものがあきらかになり、今後の学際的取り組みに援用できるのではないか。